問題の所在
1. 事業の進め方における問題
この度の「整備計画」で、最も大きな問題点と思われることは、公園の中身を完全に変えてしまう工事だということを隠しておいて、(整備計画につき)長い間意見を募っていたが、住民から強い要望がなかったから、この計画を推し進めるというやり方で強引に進めています。いわば事業の進め方が間違っていると考えられます。- 江東区は緑や生き物に一定の配慮をしているような言葉を使っています。 以下は、江東区のホームページにおける記述です。
- 仙台堀川公園 「区民の森」をテーマに整備した、延長3.7km、面積10.4ha、都内最大の親水公園です。ふれあいの森、果実の森、科学の森、親子の森などの特色ある7つの森や、桜並木が続き、・・・と書かれております。
- ポケットエコスペース 一般にビオトープと呼ばれる、いきものたちの庭のことです。放っておけば自然がどんどんなくなってしまう都会に作ったいきものたちのオアシスです。 水たまり、草原、木陰、つる植物の垣根などをつくって、後は適度に人の手を入れながら、自然が本来もつ力によって、失われた自然を取り戻そう。このような活動が1988年から始まり、現在区内の公園、小学校、幼稚園等に48箇所ができました。・・・と書かれております。
- 江東区CIGビジョン この中で、5つのビジョンとして要点を次のように書いています。
- 1.緑の施策の強化により「緑の中の都市」が実現している(まちづくり)
- 2.江東区ならではの「緑を育む文化」を創造している(文化創造)
- 3.「緑に親しむライフスタイル」が定着している(区民生活)
- 4.区民・事業者・行政が一体となって推進している(協働)
- 5.「みどり・温暖化対策基金」を積極的に活用している(基金活用)
- えこっくる江東 この施設の説明文で、環境学習情報館えこっくる江東は、環境に関する学習、活動及び情報発信の拠点として、平成19年2月に江東区が設置した公設公営施設です。と書かれており、「えこっくる江東」はすべての生きものにとって住み良いエコロジーな環境を作り、豊かな江東区にしようと「エコ」+「作る」+「江東」という意味を合わせた造語です。
- 「整備計画」に関し江東区が公示した文書からわかること
- 区報平成26年10月11日号 区が区民に対し意見の募集をした区報で、区が改修工事を考えていることが初めて公にされたものですが、
- ○親しみやすい河川と実感できる緑の創造
- ○道路の安全性の向上
- ○自転車通行増加への対応
- 区報平成28年4月11日号 「仙台堀川公園整備計画」の説明会開催を通知する区報です。意見を聴取した平成26年10月の区報と内容はほぼ同じですが、わずかながらの変化が見られます。
- ①親しみやすい水路と実感できる緑の創造と、「河川」が「水路」に変更になったほかは
- ②道路の安全性の向上
- ③自転車通行増加への対応
- 平成28年4月24日説明会で配布された基本設計の資料表紙 この説明会で、区は初めて「整備計画」なるものの全貌を明らかにしましたが、当日どのくらいの区民が参加したのかはわかりません。当時の資料は、区のホームページ「仙台堀川公園整備計画についてお知らせ」のページに説明会配布資料としてだれでもダウンロードできるようになっています。
- ①親しみやすい水路と実感できる緑道の創出と、「緑の創造」が「緑道の創出」に変更になったほかは
- ②の安全性の向上
- ③自転車通行増加への対応
- 平成28年6月に公園での掲示と区のホームページで全貌が公示された「お知らせ」部分 これまで平成26年10月と平成28年4月の説明会で、整備計画を説明し意見を募ったがより広く周知するために掲示すると書かれており、本計画のポイントを下記のように記述しています。
- 根上りによりデコボコな園路
- 自転車の増加による歩行者への危険 一つ抜かして、
- だれでもトイレ化されていない公衆便所
- 流れの不足による淀んだ水路
- 高低差があり、単調で親水性の乏しい水路
- これらの記述を見ると、江東区は非常に環境を重視し、努力をしているかのように見えます。多くの区民は、実際にいろいろな局面において区が実施してきていることを体感しており、これらの考え方が継続して今後も素晴らしい環境づくりに力を入れてくれるであろうという暗黙の期待感があり、区を信頼しているのではないかと推測されます。また、上記CIGビジョンの4には、区民との協働がうたわれており、区民の意見をくみ上げながら行われるのだという安心感を与えているようです。
公園の改修工事の理由について、公園の施設の老朽化と自転車の通行量増加による公園機能の阻害などの課題が生じていることがあげられています。
道路整備については、車の通行量は少ないが幅員がせまく、直線なのでスピードを出しやすいなど交通安全上の課題等があるとし、公園整備と合わせ電線地中化を含めて予定していることがあげられています。
また、リニューアルのコンセプトとして、道路・公園・河川の一体整備による地域課題の解決として
公園の改修工事の理由は変わりませんが、道路について、「直線なのでスピードを出しやすい」としていたものが「歩道と車道が分離していない」となり、もしかしたら、平成26年の意見聴取で変更されたものかと推測されます。開始時期は、公園は平成29年度から整備すると具体的に明記されました。
また、「リニューアルのコンセプト」が「整備コンセプト」と変えられ、「道路・公園・河川の一体整備」が「道路、公園整備」による地域課題の解決と変更になりました。内容としては、
同時に掲載された地図を見ると、平成26年の区報では葛西橋通りまでが対象区間でしたが、この平成28年の区報では清洲橋通りまでと若干短くなっています。
上記リンクはその表紙だけですが、そこに書かれた「整備コンセプト」の内容は次のようになっています。
意見募集→説明会案内→説明会会場と時間の経過で、コンセプトの内容のうち最初の一項目のみが微妙に変化してきていますが、最後の説明会場でやっと本音が出たというところでしょうか。
「区民の森」を「緑道」に変えてやる計画なのだという担当者の偽らざる気持ちが表れてしまったものかもしれません。
右側に写真とともに現状の問題点を記していますが、それは次のようなものです。
この写真を見る限り、確かに道自体に緑はなさそうですが、公園の豊かな緑と近隣マンションの緑で、緑化不全の景色には見えません。
また、「実感できる緑の創造」が必要なほど「みどりがない」ことを証明する写真もありません。
上記の背景が黄色で示された問題点の解決のポイントをよく見ると、現状(左)と解決した後(右)の説明でバランスの取れていないところがあります。
それがまさにこの部分です。「公園施設の老朽化」の問題に対応する解決が「実感できる緑の創造」となっています。
「公園施設の老朽化」を説明する写真としては、「根上りによりデコボコな園路」と「だれでもトイレ化されていない公衆便所」があげられておりますが、この解決として「実感できる緑の創造」をあげるというのは、あまりにも飛躍が大きすぎるといえるのではないでしょうか。
区が「区民の森」を目指して税金をつぎ込んで整備をした公園が、30年以上の年月を経て立派な生態系を擁する本当の「区民の森」(まだ成長過程ですが)が形成されました。そこで、また多額の税金を使ってその樹木の多くを切り倒して、桜やその他の木々に置き換えようとすることの必要性について合理的な説明が全くありません。
このような計画の本質の説明をしないまま、「これまで区民から意見を募り聞いてきた」、「実際の計画も掲示した」、だから「手続きとしてはおしまい」、「これから工事を始める」というやりかたは、まるで区民をだましているかのようにも受け取れるものです。上記1で述べたように、多くの区民は江東区の進むべき道の方向性を正しく見つめていることを踏まえると、区民の善意を踏みにじるものではないでしょうか。
次頁では、区の基本計画との整合性に問題があるのではないかということを指摘したいと思います。