(6)  なぜ2-3区では水鳥が多いのか

3区ガマ池のガマが刈られている3区ガマ池のガマが茂っている
ガマの成長にかかわらず、池に水があるときにはいろいろな生き物に利用される
2区八つ橋の池八つ橋の池で水浴びをして陸に上がるアオサギ

6区の広い池は、周囲も含めてコンクリで固められ
ている。公園内で最も生き物が少ない水場。
整備計画で作られる水路を彷彿させる。
3区北端の水路では、その浅い水位が
サギ類やカルガモに好まれている。
その岸辺は陸鳥もよく利用している
水鳥が好む環境は、いろいろな生き物に利用されている
カワセミ水浴びをするスズメショウジョウトンボ
アオスジアゲハコシアキトンボナミアゲハ

9区では、深いメイン水流の水が柵の外のヨシ原近くで、
ある程度の広さのある、浅い水場とつながっている。
そこは、子供たちの遊び場、カモやサギのエサ取り場、
陸鳥の水浴び場兼水飲み場、魚類の幼魚育成の場、
カニ類のエサ取り場になっている。
「整備」とは新しい公園を創出するのではなく
緑を守りこのように人にも生き物にもやさしい環境を増やす
計画であってほしい。
仙台堀川公園は、親水公園としてほとんどの地区で水路があり水が流れているが、メインの水流のほかに池があるところも少なくない。
2区には八つ橋の池、3区にはガマの池、5区には汐入の池があり、6区には広い池から流れる川が7区につながる。7区は鉄橋の下にメイン水流が広く池状になっているが、8区には紅葉が池があり、9区以西はメイン水流が幅広くなるせいか池はなく、水路の支流が11区にある。池はメイン水流がない12区にもある。これらの池はそれぞれ特徴がある。これらの池のうち6区の広い池だけは鳥たちの利用がほぼ全くないが、それ以外の池ではそれなりに野鳥に使われている。
公園内の池なので、すべて人工の池であることは違いがないが、6区は基本的にコンクリで固められた池で、浅く、生き物は飛来する水生昆虫くらいであろう。この池から流れ出る細流にはカルガモが泳いでいたことがあるが、この池自体に野鳥が入っているのは目にしていない。この池以外は、護岸として部分的に石を使用しているものもあるが、多くは自然のたたずまいを生かした作りになっており、岸辺は土が出ているところが多い。
メイン水流がカモ類に利用されている。特に潜水ガモは深めの水路でないと生息できない。カルガモは浅い池でも深い水路でも好んで使うが、その時の状況により使い分けているようである。

2区の池は、特にサギ類に人気がある。適度に浅く、池端にはヨシなどの植生もあり、小ぢんまりした池ではあるが、おそらく生物相的には変化に富み採餌できるだけ生き物が多数生息しているものと思われる。
八つ橋の池ではアオサギ、ダイサギ、コサギ、ゴイサギが見られている。水鳥ではないがカワセミも水中の餌を狙っていることも目撃した。3区のガマの池は、ガマが繁茂しているときには、あまり水鳥も近寄れないが、ヒメガマが刈り取られたころにはカルガモが好んで池に入っている。
2区3区とも池には水を飲むために多くの陸鳥も訪れており、蝶類も池の近くの湿った土に降り、水を飲んでいることを何度も目にした。残念なのは、アメリカザリガニやミシシッピアカミミガメなどの外来生物が八つ橋の池にいるので、遠くない将来、ほかの生物を駆逐してしまう可能性があり、そうなると野鳥の訪問も少なくなってしまうかもしれない。

整備計画を見ると、新たに作られる水の流れが現在鳥たちに見向きもされていない6区の広い池とそこから流れる細い川を彷彿させる。広くて深いメイン水流があるから、サブの池が活きてくる。細い水の流れを一つ作るのではなく、生物多様性の視点を外すことなく、多様な生物を育める水や水辺の環境を作り上げたい。

仙台堀川公園の2区、3区以外の「池」
5区汐入の池(釣り人とアオサギが憩う)6区広い池、ここから水を流している7区池のように広がる主水流(ボラの群れが回遊)
8区もみじが池(カワセミ写真家でにぎわう)11区のやすらぎの滝
仙台堀川公園の水はここから流れ始める
やすらぎの滝で魚を捕まえたコサギ
11区のやすらぎの池と、6区の広い池は共に「流水口がある、コンクリと石で固めた浅くて広い水場」です。しかし、11区は生き物の宝庫、6区は生き物が利用しない池となっています。何が違うのでしょうか。
水は汽水(11区)淡水(6区)で異なります。しかし、重要なことは、やすらぎの池は、運河からサイフォンで「生き物を含む水」を生き物を傷つけずにそのまま流し込んでいるところです。新鮮な「生き物が生きている水」が入り込めば、それを狙ってほかの生き物がやってきます。都市公園で汽水性のイソギンチャクが見られる池は都内にほとんどないはずですが、この公園では見られます。
また、11区は、やすらぎの滝から深い主水流と細くて浅い水流に分かれ、細流は主水流に合わさって流れていきます。この浅いところでは稚魚が育ち、それを目当てに子供たちやほかの生き物が群がります。主水流はクラゲや大きな魚が泳ぎ、10区以下へ生き物を伝えていきます。
一方6区では、水の流れ込む広い池では、アメンボや小さな水生昆虫はやってきますが、カニなどがいないので、子供たちも利用しません。広い池から細い流れに変わり、7区へ流れ、やがて7区の主水流が大きく池状に広がったところに流れ込みます。この6区からの池と流れは、一般に親水公園と呼ばれる公園でよく目にする、人が作った普通の水場です。生き物はほとんど目にしませんが、別に悪いわけではありません。
仙台堀川公園の非常に優れたところは、人が作った器の中に命の流れを流し込み、長い時間をかけた大地の緑で包み込んでいるところです。それなりに多額のお金はかけてきているはずですが、人も生き物も享受することができる素晴らしい環境です。いま、「整備計画」の名のもとに、さらに多額のお金をかけて、緑を切り倒し新しい若い木を植え、生き物の流れる水は地下の管を通し、足元に細くて浅い、「親水性を高めた」水の流れを作り出そうという工事がまさに着手されようとしています。
仙台堀川公園に現在ある、このようなすばらしい環境を壊してまで、にせものの「親水」などほしくはないと私たちは思うのです。


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