II.2区、3区が他の地区と異なり多くの生き物を育める理由

仙台堀川公園は「区民の森」としてつくられ、相当な年月を経ているので、公園全体の林の状況は大変優れているものと思われる。また、運河を親水公園に作り直しているという歴史的な背景があり、水と林の調和はどこをとっても十分に配慮されているという見方もできよう。
しかし、公園では明らかに鳥が多いところと少ないところがあり、それが冬に渡ってくる水鳥のように季節的な理由であるのならわかりやすいが、そうでない場合は気づかないこともある。

鳥類数計測調査を行いながら公園を毎週、端から端まで歩いていると、この理由が違いを生じるのではないかと思われるポイントがいくつか浮かんでくる。科学的な説明ではなく、感覚的な面がぬぐえないが、2-3区が優れている点、ほかの地区の何が悪いと思われるのかを挙げてみたい。また、整備計画の問題点や期待にも触れてみたい。数十年の時間をかけて築き上げてきた生態系に手を入れるのであるから、生態系を傷つける可能性がある場合には十分に検証する時間をとってから着手しても遅くはない。同じ時間をかければ戻るという保証もないのだから。

(1)  細長い形状で両側に道路があるのになぜ2-3区には鳥が多いのか

第1区東側の道路(北側入口)第1区西側の道路(北側入り口)
第2区東側の道路(北側入口)第2区西側の道路(北側入り口)
第3区東側の道路(北側入口)第3区西側の道路(北側入り口)
仙台堀川公園の形状を概観すると、小名木川から南北に伸びている部分は、1~3区にかけて公園の両側(東西)に細い道路が続いている。4区はその南端で逆L字型に曲がっているが、その南北の部分では東側だけ太い道路が走り、東西に延びている部分では公園に接する両側には、道路はない。5区から8区までの両側には道路がなく、9区で野鳥の島の西側から、公園の北側に西端の12区に至るまで細い道路があるが、南側にはない。
生態系回廊(=緑の回廊)の観点からは、一般に点より面がよく、面は広ければ広いほど良いとされる。細長い線状ではその幅が相当の長さがあれば面に近い効果があげられようが、仙台堀川公園のようにせいぜい数十メートルでは点がつながる状況に過ぎず、生態系を形成するには不利な環境であると考えられる。しかもその両側に道路があるのでは、なおさらである。
この生態学の観点で鳥類数のデータをみると、仙台堀川公園では、両側に道路がない南側の5-12区と比べると、両側に道路がある2-3区の方に鳥の種類が最も多く数も多いのが不思議に思われる。

一つは交通量が少ないことである。

第2区東側の道路(北側から南方向を見る)第3区西側の道路(南側から北方向を見る)
第3区東側の道路を通る車
(高い壁と水路でほとんど気にならない)
第3区西側の道路を通る車(この写真では木陰)
(走る車の姿はよく見える)
1区から3区までの道路は、どちらかというと東側の道路の方が西側の道路より交通量は多いように思われる。東側の道路では工事をしていることも多く、公園内で騒々しく感じるのは車の音よりも工事の音の方である。西側の道路は南側、すなわち清洲橋通り口に近いほうでやや交通量が多い程度に思われる。公園の中から外を見ると、東側の道路との間には高い壁(旧運河の堤防)があり、高い壁の内側に水路があり、外側の交通を感じさせることは少ない。西側はその壁は低く、たまに通過する車両の姿を認めることができる程度である。

注:整備計画では、東西の道路を拡張し、公園の幅を狭める内容なので、交通量は増えることは明確です。また、樹木の大半を新たに桜を中心とした林に置き換えるため、現在の生態的な優位性は致命的な打撃を受けることとなりましょう。



もう一つは園内の通路も含め道路は左右に大きく分かれており、林の領域が広く確保できていることである。

公園は林の領域が広く確保できている

公園内の舗装されない歩道は2区では小型の広場が続いているのでほとんど道を設定できない。3区ではしっかりと道を定めているというよりも、林の中を自由に歩けるような形となっているために、犬の散歩や子供たちの遊びも、特定の道を歩いてはいない。歩道であってもその道により林が分断されているような印象を与えていない。 しかも、3区はその林がほかのどの地区よりも長く続くので、幅は細いがその面積としてはおそらく相当大きなものになっているのではないか。また、その林に使われている木々には多くの種類が混在しており、特定の樹種に限定されていない。それだけ林が多様な昆虫を育む可能性を持っており、そのため、林の鳥が利用しやすくなっているものと考えられる。

注:整備計画では、公園のほぼ中央に水路と道を通すもので、現在の優位性が完全に失われることになります。

一方、5区から8区は両側に接する道路はないものの、公園から離れた南側を走る、交通量が多い葛西橋通りの影響がかなりあるのではないかと考えられる。公園のすぐわきではなくても、交通量の多い道路は緑地に住む生物には大きな影響を与えるものと考えられる。

整備計画は、現在の東西の道路の拡幅が目的である。道路が狭ければ交通量を抑制する効果もあるが、拡幅すると交通量が必ず増大する。(拡幅しても交通量が増えないなら拡幅する必要がないと考えられる。) 現在の道路の拡幅だけでも2-3区の自然に相当深刻な影響を与えうるが、公園にも手を加えることは生態系にさらに大きな衝撃を与え、現在相対的に優位な環境を維持していることが継続できなくなる危惧が懸念される。道路だけの視点で見るのではなく、仙台堀川公園の現存の自然の優位性を大きく損なうことがないよう、特別な配慮が必要である。



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