(4)  一本の水しかないのに、なぜカルガモは2区でたくさんのヒナを育てるのか

細くて深い水路が一本まっすぐに通っているだけなのに、なぜカルガモは2区でたくさんのヒナを育てるのか、I.で簡単に触れており(2.カルガモの繁殖地として2番目に重要)、後に詳述する(資料2)が、仙台堀川公園でカルガモのヒナが誕生しているのは、2014-16年の実績では、野鳥の島のある9区が一番多く、それについで2区が多い。それに7区と8区が続く。仙台堀川公園12区のうち水路のない1区と12区を除いた10区の中で、なぜこれら4つの地区だけでしか営巣しないのであろう。

注:これは調査間隔がほぼ一週間に一回と、カルガモの育雛につき追跡調査ができるようになった2014年から2016年5月までの調査記録上営巣+育雛が確認されていないという意味で、仙台堀川公園の他の地域で歴史的に絶対に営巣、育雛がなされていないという意味ではありません。
A氏も2014年以前に4区においてカルガモの育雛を目撃したことがあるとのことです。)


この答えは簡単で、営巣産卵に適した場所の有無だと考える。

2区では灌木の間に草の部分があり営巣が可能か?
3区の北端の水路は、灌木が多い
3区の中央と南の水路は、灌木が密集している部分が多い
人や動物たちが産卵抱卵の期間にカルガモを脅かすことのない環境が、極論すると他にはないということである。
いろいろな形態の環境がある9区は別として、2区と3区は切り立った壁の中に水路がある苛酷な環境で、この周辺に営巣産卵できる環境があるのであろうか。
両者とも非常に似た環境であるが、2区で繁殖するのになぜ3区で繁殖しないのか。筆者はカルガモが抱卵している場所を2区では見たことがないが、親ガモがヒナと泳ぐ水辺を見れば産卵場所はだいたい推測がつく。
3区では抱卵できる環境には灌木が生えており、十分なスペースがないが、2区では灌木が少ないので身を隠すだけ草が長く伸びていればその場所で産卵することができる。3区でもこの点を改善すれば産卵する可能性は増大するはずである。
産卵場所を選択できるような環境づくりや、孵化後にヒナを成鳥まで育て上げる環境をもう少し工夫してあげることによって、カルガモの育雛を公園として支援していく仕組みを作り上げることができるのではないかと考える。
カルガモのヒナを見ると、多くの区民が老若男女にかかわらず、大きくなってほしいと願っているが、現状はヒナがむなしく死んでいく状況が続いている。
わずかに手を加えるだけでもカルガモの成長を助ける方法はあると思われるので、整備計画にはぜひとも盛り込みたい部分である。

徹底的な草刈りが何度も行われることが、
カルガモの営巣の機会の減少に影響していないか?
7区のヨシ原はカルガモの繁殖に利用されている
今年はヨシが大きく刈られ繁殖はない
9区のヨシ原もヨシの成長と刈込のタイミングが合わず、
例年は見られない営巣場所が露出してしまった。
2016年に少なくとも2度ここで卵の存在を確認したが、
天敵から丸見えとなったためか孵化はできなかった。
(2016年6月)
昨年、4区の水路わきでカルガモと卵があった
こういう場所に生むしかなかったのだろうか
数時間後には卵も親も見られなかった
(2015年5月)
実は今年(2016年)は、例年になくカルガモの産卵数が少ない。暖冬の影響と、その後の春先の冷え込みが影響を与えているのではないかと思われるが、具体的には、暖冬でいわゆる雑草の成長が早く、公園整備者による草刈りが、かなり早い時期から徹底的に行われ、そのことが、ただでさえ選択肢の少ない産卵場所を露出させてしまい、カルガモの産卵に影響を与えてしまったのではないかと考えている。

整備計画では公園に住む生き物の繁殖は全く考慮されていない。
現在の水流を目の敵にしているようだが、何も新しい水の流れを考案しなくとも現在の優位性を維持したまま、生き物にとっての環境は簡単に改善できる。現在の水路の幅に少し変化をつけ、広めのところに人も水に近づけるデッキなどをつけ、(ネズミや猫などが入り込めない手当は必要)、カモなどが天敵から身を隠すことができるようにし、ほかにも人目につかず天敵からも見つからない、産卵に適したような環境を作り上げれば、ほかの水路とつなぐことをしなくても、おそらく現状よりはカルガモのヒナの生存率は上がるのではないかと思われる。



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