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資料2-2  仙台堀川公園でのカルガモの繁殖状況-その2- (NL通信掲載予定稿)


仙台堀川公園でのカルガモの繁殖状況 -その2-


前号では2014年に仙台堀川公園でカルガモが何羽くらいヒナを育てたのかをご紹介しましたが、本号ではそのカルガモの親子が、見られた場所についてご紹介しましょう。

図1 仙台堀川公園、調査のための区分図

図1は調査の便宜のために、仙台堀川公園を横切る道路によって12の区域に分けた図です。公園の北東端から始まり西端まで、機械的に番号を割り当てたものです。


表1は前回掲載した表に最初と最後に見た地区欄を加え、観察日ごとにカモのいた場所の変化を、地区間移動状況として加えました。(A~Hは発見順。3区では公園の東側の通路で水路が分断されていますので、北から南にかけ3a、3b、3cと区別して記載しました。)

  表1   2014年に孵化したカルガモのヒナ
初認日 終認日 終認までの
日数
地区間移動状況 状況
日付 地区 日付 地区
A 4/22 7 9 6/10 9 3 49 7-6-7-6-6-6-7-7-6-9
B 5/8 9 7 5/14 9 2 6 9のみ ×
C 5/13 2 10 5/20 2 1 7 2のみ ×
D 5/14 9 3 6/10 9 1 27 9のみ ×
E 6/24 2 9 8/25 2 1 62 2のみ
F 7/1 2 5 7/4 3 3 3 2-3a-3b-3c ×
G 7/23 9 3 8/5 9 3 13 9のみ ×
H 8/11 9 7 9/9 9 6 29 9-9-9-9-10-11-10-9 ○?

既に見ましたように、2014年には、のべ8組の親鳥が子育てをしましたが、無事飛立ったのは3組のヒナだけでした。
観察していると、疑問に思うことがたくさんでてきます。たとえば、まず子育てをする場所の選択です。
仙台堀川公園は両端の1区と12区を除く10区に水路や池がありますが、2014年にカルガモの子育てを最初に見つけたのはこのうち9区、2区、7区の3つの地区だけでした。9区には野鳥の島があり、水辺に葦があるなど、自然環境が整っているように見えますので、全体の50%がこの地区で見つかったというのは納得できます。また、7区は9区ほど規模が大きくありませんがやはり水辺に葦がある環境ですし、鉄橋の下に広々とした水面があります。しかし、2区は周囲をコンクリートで固められた深い水路で、環境的にも決して恵まれているようには見えません。なぜ2区が9区に次いでカルガモの子育てが多かったのか非常に興味があります。
次の疑問は、多くのヒナが全滅している中で、飛立ったヒナは、どのようにして生き延びることができたのかということです。
無事飛立った3組のうち2組が地区間を移動しており、反対に一地区に留まったもの5組のうち飛立ったのは1組だけでした。この年の観察結果だけで断定的なことはいえませんが、移動することが、無事に飛立つことに貢献しているのかもしれません。
地区間を移動するということに関して、仙台堀川公園を良くご存知の方は、9区から11区を横切る道路は全て橋になっていますので、下の水路はつながっており、Hのヒナが移動したことには疑問をもたれないでしょうが、Aのヒナが移動した6区と7区の間には明治通りがありますし、それぞれの水路は独立しているように見えますので、移動したというのは不思議に思われるかもしれません。実は明治通りの下には、水を流す暗渠があります。ゴミなどの浮遊物を防ぐ柵が暗渠の両側に設置されていますから、本来ならカモ類は通過できないのですが、柵の一部分が壊れており、カモが明治通りの下をくぐって反対側に移動することができます。私は、親子のカルガモがこの暗渠に入っていくところを目撃しました。(Aのヒナが、最後に、つながっていない9区に移動しているのはヒナが飛べるようになり、飛んで移動したものと思われます。) 
なお、移動したのに結局飛び立てなかったFのヒナにつきましたは、 人為的に移動させられたと思われますので、次号で詳しく触れたいと思います。

最後に生存率の疑問があります。9区は上述のように環境的に公園内のどの地区よりも優れているように思われます。しかも、水路は無理なく他の地区に移動できるようになっていますので、ヒナを育てるのには申し分ないように思われますが、最終的に飛立つことができる割合は25%と少なくなってしまうのはなぜでしょうか。また、2区では3組の中でEしか飛立てませんでした。6区と7区の間を行き来したAはなぜ無事に飛びたてたのでしょうか。これも断定的なことを言える段階ではありませんが、ヒントになるのではないかと思われることがあります。一つは天敵の存在です。カルガモのヒナの場合には生まれてからすぐ泳ぎ始めますので、木の葉で隠れた巣にいる小鳥と比べると、天敵から狙われる可能性も非常に高くなります。
 表2   2014年4~8月の調査日における
     種類別個体数累計

天敵予備群/地区 2区 6区 7区 9区
カワウ 0 0 2 123
アオサギ 1 1 0 155
ハシブトガラス 22 35 7 74
ハシボソガラス 0 0 0 5

表2を見ますと9区は天敵となる可能性のある鳥たちが圧倒的に多くいます。天敵には鳥以外に猫やネズミなどもいます。猫やねずみは深い壁で囲まれている水路でヒナを襲うことは困難ですが、9区のように水辺が地面とつながっていると襲いやすくなるということがあるのかもしれません。
もう一つのヒントとなるのは、天敵に襲われそうになったときに、身を隠す場所があるかどうかだと思います。6区には水路の上に釣りなどを楽しめるデッキがありますので、その下は身を隠しやすく、また、7区との間には明治通り下の暗渠があります。(暗渠にはネズミがいるかもしれません。) 2区には身を隠す場所は全くなく、9区は葦の茂みなどがありますが、逆に天敵が隠れている可能性もあります。

どういう環境であればカルガモはヒナを育てやすく、また、確実に飛立つまで育てるには何が必要なのかを正しく知るためには、これからも地道に、もっと詳しく観察を続けていくことが大切であると実感しています。次号では、カルガモの子育てに対する人間の関与について、地区間を移動したけれども飛立つことができなかったFを中心にご紹介してみたいと思います。
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