(カルガモの繁殖状況データからわかること)

2014年の状況を記した文章(資料2-1~2-3)で指摘したが、資料2において、2015年の状況を見ると、生まれた地区から他の地区に移動することが成鳥となり飛び立つことに直結していることがより鮮明にわかる。上述のように、カルガモが営巣産卵できるような場所を確保してやることで、繁殖率を上げることができるが、その後の生育を促し、最終的に成鳥となり飛び立つことができるようにするためには、水路をできればほかの地域に移動できる形態にしてやることが重要である。
しかし、2区においては2014年には3家族のうち1家族が、2015年には2家族のうち1家族が無事に成鳥として飛び立っており、2区が初認から終認まで同じ場所に居続けて成鳥となれるただ一つの場所であるということは大変興味深い事実である。

3区の北側の水路

この調査を始める前には、3区の一番北側の水路(左図)を個人的には興味を持ってみていた。
設計上いろいろな工夫が読み取れ、狭いところ広いところ、岸に上がって休めるところ岸辺に植生のあるところ、岸辺に土が露出しているところなど、それほど長くはない中で、いろいろな工夫がなされていて、カモなどこの場を利用する生き物にとっては多様な使い方ができるように思われた。実際、繁殖期以外では成鳥のカルガモはよくこの場所でエサ取りをしているのを見るし、サギ類も見られムクドリやドバトも水辺に降りているところを見かける。

3区の北側の水路で巣材の土をとるツバメ
ツバメがほんのわずかな土の露出部分で土を巣材として採取していくところを見たのは意外であった。
しかし、カルガモはここでは産卵をしない。
一つには産卵に適する場所がないということではあるが、
2区の浮き台は有益と思われるが万全ではない?
2区において、カルガモが休めるところといえば、水量が少ないところで露出する土の部分か、人が設置した浮台の部分であり、これは人工物とはいえカルガモにとっては有益なものに思われる。両側が切り立った壁になっている環境に浮いている台なので、天敵はカラスなど空からくるものと理解していたが、実際にこの浮き台上にいるときにネズミにヒナがさらわれるところを目撃した人がいた。木の枝などを伝い降りてきてヒナを連れ去ったという。
いろいろ工夫されているように見えるが
カモが繁殖するにはリスクが大きい?
この観点からみると、3区の北側の水路は細い部分では猫などは簡単に岸で鳥を襲えるし、橋もあり、カモ側からはリスクが満載である。また、広い流れのところも両岸が斜めになっており、水が浅いために他の動物は十分にこの水路のカモを襲うことができるのである。調査を続ける中でこのような、人間が考えて良かれと思う場所は、必ずしもカルガモなどそこを利用する生き物にとって好都合ではない可能性があることが分かった。

自然環境を整えればそこを利用できる生き物が利用する
多様な自然があればそれだけ生物も多様になる
多くの生き物が利用する2区八つ橋の池にて
親水公園であるので、魚やエビなど水路の生き物を捕まえて楽しむ方法もあるが、魚介類と合わせてそこを生活の場として暮らす生き物、カモ類は勿論、サギや、水辺で水浴びや飲み水のために集う鳥たちも含めて、広く多様な生き物が暮らせる環境を提供することが求められるのではなかろうか。すでに30年を超える長期にわたり、都内でも有数な広さ(長さ?) を誇る親水公園を擁している江東区でなければできない仕事といえるのではなかろうか。現実に生き物が好んで使うことができる環境を整備してやりたいものである。


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